血糖値の上昇を抑えるハーブとして知られる桑(マルベリー)。マイクロプラスチック問題の解決策とつながりが? 米国に拠点を置くスタートアップ企業の取り組みを見つけました。
ハーブとしての桑、そして養蚕
日本各地でおなじみの桑。「子どもの頃、桑の実を摘んで食べたな〜」といった思い出がある方もいらっしゃるのでは?
桑の葉は、ハーブとしても優秀です。
桑(マルベリー)
学名:Morus alba 科名:クワ科 使用部位:葉部
食後の血糖値の上昇を抑える。葉に含まれるデオキシノジリマイシンが、二糖類を分解する酵素を阻害し、余分な糖が吸収されないため。分解されずに残った二糖類は腸内細菌のエサとなり、腸内環境を整えることにつながる。美白成分とされるクワノンも含まれ、パウダー状にした桑の葉をクレイパックに入れるのもおすすめ。
井上重治著『マルベリーの恵み ハーブとしての桑の歴史と有効性の評価』には「マルベリー(桑)は古今東西をとわず、もっとも古い生薬のひとつです」とあります。
桑と深い関係があるのが養蚕です。カイコは桑の葉に含まれるcis-ジャスモンに惹きつけられ、葉を食べて成長します。カイコがつくる繭を紡いでできるシルクは、かつて日本の有力な輸出品でしたが、化学繊維の台頭などを背景に、規模が小さくなっていきました。結果として、放置されてしまった桑畑は多いのだとか。
シルクたんぱく質がプラスチックの代わりに?
シルクがもつ機能に着目したのが、米国にあるスタートアップ企業Evolved by Nature。プラスチックに代わる素材になる、というのです。
今、世界中でマイクロプラスチックが問題になっています。マイクロプラスチックとは5mm以下のサイズのプラスチックで、海のなかにたくさん流れ出ているだけでなく、魚や人間の体内からも見つかっています。
日本ではレジ袋の有料化でプラスチックに大きな注目が集まりましたが、ポリエステルなど化学繊維で作られた服や、マイクロビーズと呼ばれるプラスチック粒子が含まれた歯磨き粉や化粧品などもマイクロプラスチック汚染の原因となっています。(脱マイクロビーズの動きが進んでいます。参考→花王が脱マイクロビーズ!海がプラスチックでいっぱいになる前に(後編))
Evoled by Natureが提供するのはシルクたんぱく質で作られた素材。化学繊維やマイクロビーズなどの代わりに使われるもののようです。
同社のウェブサイトを見ると、シルクのサプライヤーとして、日本の養蚕農家さんの姿も。桑に供給される水は雨水のみであること、無農薬であることが書かれています。
桑と養蚕×サステナビリティの動きは他にも
カイコに着目する動きは多々あるようで、動物実験に使われるほか、食品材料としての開発も行われています。
一方、動物福祉の視点から、シルクの使用を控えるという方も。シルクは、カイコが生きた状態で繭を茹でて糸をとっていくため残酷だという理由からです。これに対し、カイコが繭を出るまで待ってから糸にする方法もあるのだとか。こうして作られた繊維は、ピースシルクやクルエルティフリーシルクなどと呼ばれています。
化学繊維というプラスチックが広まって、一度は衰退した養蚕、そして放置された桑畑。脱プラスチックの動きから回帰しているのは皮肉ですが、桑茶などハーブとしての桑の活用と併せて注目してみたい動きです。